少し前の話であるが、娘が小学校に上がったのと同時に、しまじろうを毎月取っていたこともあり、進研ゼミのDMが送られてきた。さすがに、顧客データベースを持っているところは強い。
ご存知の通り、しまじろうや進研ゼミを展開しているのは、ベネッセ・コーポレーションである。ベネッセ・コーポレーションは、以前は福武書店という名で1950年出版社として設立したが、1954年には倒産を経験している。岡山県下の中学校や、高校に向けての生徒手帳や郷土地図、高校入試の予想問題集を供給していた会社である。
その後、通信教育事業を展開し、進研ゼミを展開する。出版事業といった「モノ」から「ひと」を中心としたビジネスへの転換が、その後の急成長と高収益を生むきっかけになっている。人を中心とした継続ビジネスの中核にあるのは、人と人の「関係性」である。長い時間をかけて培われる顧客との関係性が、ビジネス上の付加価値をもたらしているのである。
ベネッセは、「ファン・シンパの最も多い会社になる」ことを目的として掲げているのは、そうした理由からである。たまひよ事業でも、単なる雑誌の売り切りではなく、読者との、また、読者間の関係性の最大化を目的としている。
そのした中で、進研ゼミの特徴である「赤ペン先生」による添削指導は、今でもベネッセの一番の事業の柱になっている。全国に約2万人いる赤ペン先生は、ベネッセの社員ではなく、大半が、30代~40代を中心にした主婦である。子供や教育に興味を持っていて、比較的学歴が高い人が多く、かつて教師だった人もいる。こうした方は、単に金銭的な報酬が目的ではなく、結婚後も社会との接点を維持しながら、自分の能力を活かしたいと思っている人達である。
地域ごとにグループ制をとっていて、グループリーダーを15人に一人もうけ、全国から集められた答案は、グループリーダーの家に郵送される。赤ペン先生は、週に2度グループリーダーの家に答案を取りにいき、添削が終わったら答案を、また、グループリーダーの家に届けるようになっている。赤ペン先生同士の交流もあり、一緒に映画を見に行ったり自分の子供のことを話し合ったりといったコミュニティーを形成している。さらに、月に1回の勉強会もある。
会員との関係も双方向のコミュニケーションを重視している。添削だけでなく、お便りに答えたり、誕生日カードを送ったりといったように、様々な形でコミュニケーションを取っている。
もともと4大出の女性が、家庭に入ってからの眠っている知的社会的遊休資産を活用したネットワークを組織しているのである。社員を雇うより低コストの人的資源を組織化し、質の高いサービスを提供することができる仕組みを作っている。
赤ペン先生の仕組みを、当初、高学年で展開していたのを、低学年まで横展開したのである。そして、さらに事業展開としては、社会人まで展開していっている。社会人ではうまくいかなかったが、人の一生を全体として支援していくといった理念を明確にした展開は、継続性がある。
それにしても、顧客データを持っているところは強い。不易ビジネスの展開と、人生になくてはならないものを提供するといった事業展開からくるサービス提供を柱にしていることからすると、節目節目でまたDMが送られてくるだろうな~と思いながら、カミサンから「継続していいでしょ」といったはじめから決定されている話の確認をされ、「いいよ!」と返事をした。ベネッセは、本当に、誰が意思決定者かもよく知っていますね。 (=⌒▽⌒=)
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